筋肉の働き【身体を動かす仕組み〜生命活動の維持機能までまとめて解説】

筋肉の知識を深堀りしている方

筋肉の働きって、どんなものがあるんだろう? 身体を動かしたりする以外にも役割があるのかな?

こんな疑問にお答えします。

今回は、筋肉の基礎知識として、以下を解説していきたいと思います。

  • 筋肉の働き

私は、渋谷のパーソナルトレーニングジム「Shibuya Fitness Sharez」を2015年から運営しており、近年はパーソナルトレーナー養成スクール「Sharezスクール」の運営と講師も勤めています。

スクールでは、解剖学や生理学、バイオメカニクスなど、パーソナルトレーナーとして活動するための基礎知識の講義もあり、それらの講義の内容を整理して、今回のテーマについて解説していきたいと思います。

筋肉の働きとは?

筋トレをしている方にとって「筋肉の働き」と言えば、「身体を動かす、パワーを発揮するもの」というイメージが強いのではないでしょうか?

もちろん、それらも大事な働きなのですが、他にも「消化管や血管を動かしたり」、「体温を調節したり」と、生命活動を維持するための役割も多くあります。

今回は、そんな筋肉の働きについて、詳しく解説していきたいと思います。

筋肉の働き1:身体を動かす

筋肉の働き1:身体を動かす

人の身体が動くには、関節、骨が動く必要があります。

筋肉は、骨と骨に付着しており、筋肉が伸び縮みする事で関節が動き、身体を動かすことができます。

例えば、大腿四頭筋は足の付け根の股関節、大腿骨から、膝の骨および、脛の骨に付着しています。ですので、大腿四頭筋が縮むと、曲がっている膝は伸びる動きが起こります。反対に、大腿四頭筋が伸びると、膝を曲げる動きが起こります。

筋肉の働き2:姿勢を維持する

筋肉の働き2:姿勢を維持する

人が立っているときは、脱力しているのではなく、筋肉が少しずつ緊張し、前後、左右のバランスを取っている事で姿勢が保持されています。

立位でまっすぐ立っている時も、胸部の筋肉(大胸筋)、首周辺や背部の筋肉(脊柱起立筋や広背筋)、腹部の筋肉(腹筋群)、臀部の筋肉(大臀筋)、大腿部の筋肉(大腿四頭筋)、下腿部の筋肉(下腿三頭筋)など、全身の筋肉が少しずつ緊張し、まっすぐに立つ姿勢を保持しています。
※重力に反発し、正しい姿勢を維持しようとする筋肉の総称を「抗重力筋」と言います。

姿勢保持の例としては、例えば、前に重心が行き、バランスを崩しそうになった場合、身体の背面の筋肉が縮み、重心を後ろに戻そうという働きが起こっています。

筋肉の働き3:関節への負荷を軽減する、安定させる

筋肉の働き3:関節への負荷を軽減する、安定させる

筋肉は基本的に関節をまたいで骨と骨に付着しており、関節の位置を安定させ、筋肉が力発揮することで関節にかかる負荷を肩代わりしてくれています。

例えば、膝関節の周辺には、大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋などが付着しています。これらの筋肉が力を発揮することで、膝関節にかかる負荷を軽減し、膝の関節の位置を安定させています。

筋肉の働き4:消化管や血管を動かす

消化管(口、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門)や血管の内側の壁には、筋肉が存在します。

消化管や血管の内側の壁に存在する筋肉が収縮、弛緩することで、ポンプのような動きを生み出し、食べたものや血液を運搬しています。

具体的には、血液の運搬の場合、血管の内側の壁にある「血管平滑筋」が収縮すると、血管が狭くなり、圧力が高まります。反対に弛緩すると、血管は広くなり、圧力が下がります。この動きを繰り返すことで、ポンプのように血液を全身に送り出しています。

筋肉の働き5:心臓を動かす

筋肉の働き5:心臓を動かす

心臓を構成する「心筋」という筋肉があり、心筋が収縮、弛緩を繰り返す事でポンプのような働きをし、血液を全身に送り出しています。

「心筋梗塞」という病気がありますが、これは動脈硬化などが原因で心筋に酸素が送られず、心筋が働くことができなくなる病気です。心筋が働かなくなってしまうと、全身に血液を送ることができなくなり、死に至る可能性もあります。

筋肉の働き6:臓器や骨の保護

筋肉の働き6:臓器や骨の保護

筋肉は内臓や、骨を衝撃から守っています。内臓、骨の外側には必ず筋肉が存在し、筋肉が力を発揮することで、外からの力に抵抗したり、力を吸収したりしています。

腹部の筋肉がわかりやすい例です。

腹部の筋肉がどんな構造をしているかと言うと、腹直筋の下に「腹横筋」、横には「外腹斜筋、内腹斜筋」と、何層にもなり分厚い構造になっています。

これはそれらの内部にある、臓器を守る役割も担っているからです。腹部の筋肉は他の筋肉と比べて、あまり大きく可動しませんが、それは腹部の筋肉の役割として、「安定させる、保護する」という部分が大きいからです。

筋肉の働き7:熱を発生させる、代謝を上げる

筋肉の働き7:熱を発生させる、代謝を上げる

ヒトの身体の熱生成の多くは、筋肉が担っています。筋肉は、食べたもののエネルギーを利用して身体を動かし、同時に熱を発生させます。これにより、体温が上昇します。

皆さんも運動すると身体が暖かくなるのを感じると思います。

ヒトの平常時の体温は36〜37度に保たれており、例えば外気の温度が低い時などは、体内で筋肉が熱を発生させ、体温が落ちないように働いています。

筋肉量が少ない人は、熱の生成力が低くなるので、体温が下がりやすくなります。

筋肉の働き8:免疫力を上げる

筋肉は、体温調整、血液循環などに影響しているので、免疫力にも影響します。

筋肉量が多い方や、または筋肉を動かす機会が多い方は、免疫力が高くなります。なぜなら、筋肉を動かし、血液循環を促進したり、体温が適正に保たれることで、身体の機能はベストな働きをしてくれるからです。

数ヶ月、筋トレや有酸素運動を継続すると、免疫力がアップするという研究結果は多く出ています。

反対に、筋肉量が少なかったり、身体を動かす機会が少ないと、体温が低くなってしまったり、血液循環が悪くなってしまい、身体の機能が十分に働いてくれません。

詳しい研究結果は、以下の記事を参考にしてみてください。
正しい知識で風邪・インフルエンザを防げ!-免疫力を上げる運動習慣- | Waseda Online

筋肉の働き9:ホルモンの産生

筋肉は、様々なホルモン分泌の機能を備えています。

筋肉から分泌される「マイオカイン(筋肉由来内分泌因子)」は30種類以上あり、「筋肉の合成や、骨の形成、糖質の代謝、脂質の代謝、抗炎症作用、心筋細胞や血管内皮細胞の保護」などがあると言われています。

筋肉の働き10:水分を蓄える

筋肉の働き10:水分を蓄える

ヒトの身体の機能を保つ上で、体水分量は重要です。

水分を蓄えることで、「体温の維持、調節、酸性、アルカリ性のpH調整、血液循環、排泄、呼吸など、ヒトの生命維持、コンディション」に関わっています。

正常な成人の方であれば、体水分量は体重の60%程を占めていますが、これが数%減ってしまうだけで、身体の機能に支障が出てしまうのです。

そう言った意味で、組織のうち80%が水分で構成されている筋肉は、体水分を保つ上で重要な役割を果たしています。
※ちなみに、脂肪の水分割合は20%ほどです。

さらに、筋肉量の多い人の方が、体水分量もキープしやすくなります。

痩せ型の人の方が体調を崩しやすいのは、筋肉が少ないことで身体の水分量が低下しやすく、各組織へ栄養素が渡りづらくなったり、体温の維持にも影響が出てしまい、免疫力が低下しやすくなってしまうことが影響しています。

筋肉の働き11:血糖値を調整する

筋肉の働き11:血糖値を調整する

食事から摂取した糖質は、「インスリン」というホルモンによって、血中から他の組織(主に、筋肉、肝臓、脳)に運搬され、血糖値を保っています。

血液中の糖質は、筋肉や肝臓、脳に運搬され、それらにストックできない余った分が、体脂肪としてストックされる仕組みになっています。

筋肉量の少ない人は血糖の受け皿が小さいことになり、筋肉量の多い人は血糖の受け皿が大きいことになります。

つまり、同じ食事をしても、筋肉量が多い人の方が血糖値を調整しやすく、筋肉量の少ない人の方が血糖値を調整しづらい(あるいは体脂肪が蓄積しやすい)と言えます。

まとめ

筋肉の働きは、身体を動かすこと以外にも、生命活動を維持するための役割も多くあります。また、筋肉量が多いこと、筋力トレーニングをすることで、多くのメリットがあることを解説してきました。

パーソナルトレーナーの方や指導者の方は、お客様に「運動の価値やメリット」を伝える際に、今回の内容をご紹介すると、より理解いただけると思います。ぜひ活用してみてください。

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