首の筋肉の名前と働き【トレーナーが覚えておくべき情報も合わせて解説】

首の筋肉の名前と働き【トレーナーが覚えておくべき情報も合わせて解説】

各筋肉を調べている方

首の筋肉の名前や働きを知りたい! 首の各筋肉がどの骨についているか(起始や停止)を画像でチェックしたい! 首回りの筋肉で、パーソナルトレーナーが頭に入れておくべきなことってある?

こんな疑問にお答えします。

今回は、筋肉の基礎知識として、以下を解説していきたいと思います。

  • 首の筋肉の役割
  • 首の筋肉の名前と働き(画像つき)
  • 首回りの筋肉で、パーソナルトレーナーが頭に入れておくべきなこと

私は、渋谷のパーソナルトレーニングジム「Shibuya Fitness Sharez」を2015年から運営しており、近年はパーソナルトレーナー養成スクール「Sharezスクール」の運営と講師も勤めています。

スクールでは、解剖学や生理学、バイオメカニクスなど、パーソナルトレーナーとして活動するための基礎知識の講義もあり、それらの講義の内容を整理して、今回のテーマについて解説していきたいと思います。

首の筋肉の役割

首の筋肉の役割としては、頭部、体幹部を動かす働き(運動性の働き)と、安定させる働き(支持性の働き)があります。

首の筋肉は、屈曲、伸展、回旋、側屈する事で、頭を自由に動かしたり、6〜7kgの重量があると言われている頭部を常に支えています。

頭部を体幹部を繋ぐ重要な部分なので、細かい筋肉が数多くあります。

首の筋肉の名前と働き

首の周りには、以下の筋肉があります。

  • 胸鎖乳突筋
  • 僧帽筋
  • 菱形筋
  • 肩甲挙筋
  • 斜角筋群
  • 後頭下筋群
  • 椎前筋群
  • 舌骨下筋群
  • 頭板状筋
  • 頸板状筋
  • 広頚筋
  • 頭半棘筋
  • 顎二腹筋

それぞれについて、特徴や働きなどを解説していきます。

胸鎖乳突筋

胸鎖乳突筋

胸鎖乳突筋は、側頭部から、鎖骨、胸骨に付着しているので、「頭を前に倒したり、頭部の回旋、頭部の側屈の動き」に関与します。

首の後ろではなく、横から前にかけての位置が凝っている場合は、この胸鎖乳突筋が関係している事が多いです。

胸鎖乳突筋の起始は「胸骨柄、鎖骨」で、停止は「側頭骨の乳様突起」です。

胸鎖乳突筋が収縮する事で、「頚椎の屈曲、頚椎の回旋、頚椎の側屈」といった働きがあります。

僧帽筋

僧帽筋

僧帽筋は、頭骨から肩甲骨にかけて、そして、首から背中にかけて幅広く付着しているので、「頭部の後方、側方、回旋の動き」、「肩甲骨の内側、下方、上方の動き」など、多くの動きに関与します。

僧帽筋は、いわゆる肩こりの時に凝る筋肉であり、首の後ろが凝っている場合は、僧帽筋上部が関係している事が多いです。

僧帽筋の起始は「後頭骨から胸椎、頚椎の突起」で、停止は「鎖骨と肩甲骨の突起」です。

僧帽筋が収縮する事で、「肩甲骨の挙上、肩甲骨の上方回旋、肩甲骨の内転、肩甲骨の下制、頭部の伸展、頭部の側屈、頭部の回旋」といった働きがあります。

菱形筋

菱形筋

菱形筋は、頚椎、胸椎から肩甲骨の内側に付着しているので、「肩甲骨を寄せる動き」に関与しています。

巻き肩、猫背の方は菱形筋が弱っており、肩甲骨が開いたり、肩甲骨が上に上がってしまっている可能性が高いです。

菱形筋の起始は「頚椎と胸椎の棘突起」で、停止は「肩甲骨の内側縁」です。

菱形筋が収縮する事で、「肩甲骨の内転、肩甲骨の挙上、肩甲骨の下方回旋」といった働きがあります。

肩甲挙筋

肩甲挙筋

肩甲挙筋は、頚椎から、肩甲骨に付着しているので、名前の通り、「肩甲骨を挙上する動き」がメインです。また、肩甲骨下部にも付着しているので、「肩甲骨の下方回旋の動き」にも関与します。

肩甲挙筋は、肩甲骨を上に引っ張る働きがあり、僧帽筋と同様に、肩こりに影響します。

肩甲挙筋の起始は「上位頚椎の横突起」で、停止は「肩甲骨の内側縁」です。

肩甲挙筋が収縮する事で、「肩甲骨の挙上、肩甲骨の下方回旋」といった働きがあります。

斜角筋群(前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋)

斜角筋群(前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋)

斜角筋群は、「前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋」の3つから構成されており、肋骨の上部と、頚椎に付着しているので、「頭を前に曲げる動き」に関与します。

斜角筋群は、胸鎖乳突筋と同様に、首の前が凝る時に関係します。また、肋骨を引き上げて胸郭を広げる動きをサポートします。

斜角筋群の起始は「頚椎の横突起」で、停止は「第1〜2肋骨」です。

斜角筋群が収縮する事で、「頸部の屈曲、頸部の側屈、胸郭の拡張」といった働きがあります。

後頭下筋群(大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋)

後頭下筋群(大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋)

後頭下筋群は、大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋の4つから構成されており、頭の後ろ、頚椎から、後頭骨、頚椎に付着しているので、「頭を後ろに持っていく、頭を回旋する動き」に関与します。

後頭下筋群は、猫背、巻き肩などによって、首の後ろが凝る、などの際に関係しています。

後頭下筋群の起始は「頚椎の突起」で、停止は「後頭骨、頚椎」です。

後頭下筋群が収縮する事で、「頭部の伸展、頭部の側屈、頸部の回旋、頸部の伸展」といった働きがあります。

椎前筋群(頚長筋、頭長筋、前頭直筋、外側頭側筋)

椎前筋群(頚長筋、頭長筋、前頭直筋、外側頭側筋)

椎前筋群は、頚長筋、頭長筋、前頭直筋、外側頭側筋の4つから構成されており、首の後ろ、側部から後頭部、頚椎から、後頭骨、頚椎に付着しているので、「頭を後ろに持っていく、頭を回旋する動き」に関与します。

椎前筋群は、ストレートネックなどで、頭がニュートラルな位置より、やや前にある場合、疲労しやすい部位です。

椎前筋群の起始は「頚椎」で、停止は「頚椎、後頭骨」です。

椎前筋群が収縮する事で、「上部頚椎の屈曲、頸部の側屈」といった働きがあります。

舌骨下筋群(胸骨舌骨筋,胸骨甲状筋,甲状舌骨筋,肩甲舌骨筋)

舌骨下筋群(胸骨舌骨筋,胸骨甲状筋,甲状舌骨筋,肩甲舌骨筋)

舌骨下筋群は、胸骨舌骨筋,胸骨甲状筋,甲状舌骨筋,肩甲舌骨筋の4つから構成されており、胸骨、鎖骨、肩甲骨から、顎のラインにある舌骨体、その下にあり、ノドの付近にある甲状軟骨に付着しているので、「頭を前に持っていく動き」に関与します。

また、アゴのラインにある舌骨を動かしたり、口を開いたり、何かを飲み込んだりする働きもあります。

舌骨下筋群の起始は「胸骨柄、甲状軟骨、肩甲骨上縁、胸鎖関節包、鎖骨」で、停止は「甲状軟骨、舌骨体」です。

舌骨下筋群が収縮する事で、「頸部の屈曲、舌骨の引き下げ、舌骨を下後方に引く、甲状軟骨の引き下げ、甲状軟骨の挙上」といった働きがあります。

頭板状筋

頭板状筋

頭板状筋は、椎、胸椎から後頭部、側頭部にかけて付着しているので、「頭部を後ろに倒す、側方に倒す、横に回旋させる動き」に関与します。

頭板状筋は左右に分かれており、片方が収縮すると、頭部が側方に倒れたり、片方に回旋します。両方一緒に働く際には、首が後ろに曲がり、頭部が後ろに倒れます。

頭板状筋の起始は「頚椎、胸椎」で、停止は「後頭骨の上項線、乳様突起」です。

頭板状筋が収縮する事で、「頭部の後屈、頭部の側屈、頭部の回旋」といった働きがあります。

頸板状筋

頸板状筋

頸板状筋は、胸椎の中心部から、頚椎の横突起に付着しているので、「頭部を後ろに倒す、側方に倒す、横に回旋させる動き」に関与します。

頸板状筋は、頭板状筋のすぐ下に位置しており、機能も似ています。左右に分かれており、片方が収縮すると、頭部が側方に倒れたり、片方に回旋します。両方一緒に働く際には、首が後ろに曲がり、頭部が後ろに倒れます。

頸板状筋の起始は「胸椎の中心部」で、停止は「頚椎の横突起」です。

頸板状筋が収縮する事で、「頭部の後屈、頭部の側屈、頭部の回旋」といった働きがあります。

広頚筋

広頚筋

広頚筋は、下顎から肩、胸にかけて膜のように付着しているので、「首から胸、肩にかけての皮膚の緊張」に関わります。また、口角を下げる動作に関与します。

広頚筋は、名前の通り、顎から胸、肩にかけて広い範囲に及ぶ筋肉です。

また、「表情筋」とつながっており、広頚筋と表情筋が引っ張り合うことで引き締まった首すじやフェースラインが維持されます。しかし、加齢などで、広頚筋が弱ってくると筋力のバランスが崩れ、ほうれい線や口の両脇のしわなど、顔のたるみの原因にもなってしまいます。

広頚筋の起始は「大胸筋と三角筋の上部を覆う皮膚と筋膜」で、停止は「下顎骨下縁、顔面下部の皮膚」です。

広頚筋が収縮する事で、「頸部の屈曲、口角の引き下げ、頸筋膜の緊張、咬筋筋膜の緊張、皮膚の引き上げ」といった働きがあります。

頭半棘筋

頭半棘筋

頭半棘筋は、頚椎、胸椎から後頭骨にかけて付着しているので、「頭を後ろに倒す、頭部を横に倒す、頭部を横に回旋する動き」に関与します。

頭半棘筋は、左右に分かれており、片方が収縮すると、頭部が側方に倒れたり、片方に回旋します。両方一緒に働く際には、首が後ろに曲がり、頭部が後ろに倒れます。

頭半棘筋の起始は「頚椎、胸椎」で、停止は「後頭骨」です。

頭半棘筋が収縮する事で、「頭部の後屈、頭部の側屈、頭部の回旋」といった働きがあります。

顎二腹筋

顎二腹筋

顎二腹筋は、前方は、下顎骨から舌骨、後方は、側頭骨の乳様突起から舌骨に付着しているので、「開口、嚥下」に関与します。真ん中付近に中間腱で分かれており、前後二つになっていることから、「顎二腹筋」と言われています。

顎二腹筋の中間にある、舌骨が固定されている際には、下顎骨を舌骨に近づけるので、開口します。閉口時には、舌骨を引き上げ、飲み込む動作をサポートします。

顎二腹筋の起始は「側頭骨の乳様突起(後方)、下顎骨(前方)」で、停止は「中間腱のある舌骨の上部」です。

顎二腹筋が収縮する事で、「舌骨を引き上げる、下顎骨の下制(開口)」といった働きがあります。

首回りの筋肉で、パーソナルトレーナーが頭に入れておくべきなこと

首回りの筋肉で、トレーナーの方が頭に入れておきたいのは、以下の3つに関与する筋肉です。

  • 肩こりの原因になりやすい筋肉
  • 首こりの原因になりやすい筋肉
  • 猫背の原因になりやすい筋肉

肩こり、首こり、猫背は、一般の方が日常生活内で気になりやすい症状ですので、質問されることも多く、情報を把握しておくことをオススメします。

では、それぞれについて詳しく解説していきます。

肩こりの原因になりやすい筋肉

肩こりの原因になる筋肉の代表的なものが、「僧帽筋と肩甲挙筋」です。

2つとも、肩甲骨と頚椎に付着しており、凝ったり、固くなり、動きが悪くなることで、血行が悪くなり、筋肉の弾性が失われ、肩と首の間が硬直してしまいます。

マッサージで患部をほぐしたり、冷やしたりすることも大切ですが、根本原因を探ることも大切です。

姿勢不良から、肩こりが起こっているのであれば、患部ほぐすだけでなく、姿勢改善にも取り組まなければいけません。

首こりの原因になりやすい筋肉

首こりの原因となる筋肉の代表的なものが、「胸鎖乳突筋」です。

胸鎖乳突筋は、側頭部から鎖骨や胸骨に付着しており、凝ったり、固くなり、動きが悪くなることで、血行が悪くなり、筋肉の弾性が失われ、首が硬直してしまいます。

首こりも、肩こり同様に、根本原因を探ることが大切です。

巻き肩が原因で首こりが起こっているケースもありますが、その場合は、まず根本原因の巻き肩の改善に取り組まなければなりません。

猫背の原因になりやすい筋肉

猫背の原因となる筋肉の代表的なものが、「僧帽筋」です。

僧帽筋は、後頭骨、頚椎、胸椎から、鎖骨、肩甲骨にかけて付着しており、僧帽筋が弱まってしまうと肩甲骨を寄せる力が弱くなるので、肩甲骨が開いてしまい、結果として上背部が丸くなってしまいます。

デスクワークの方は、腕を前にした姿勢が多いので、肩甲骨が開いてしまい、僧帽筋を収縮する力が弱くなっているケースが多いです。

まとめ

首の筋肉は、頭部、体幹部を動かす働き(運動性の働き)と、安定させる働き(支持性の働き)があり、頭部を体幹部を繋ぐ重要な部分なので、細かい筋肉が数多くあります。

首周りの筋肉で、パーソナルトレーナーとして押さえておきたいポイントについては、この機会に習得しておきましょう。
※首こり、肩こり、猫背の改善方法については、別記事にて紹介していきたいと思います。

今回のテーマの「首の筋肉の名前と働き」や、その他の基礎的な知識に関して、ご質問や疑問などございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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