肩甲骨の動きが気になる方
こんな疑問にお答えします。
今回は、以下の内容を解説していきたいと思います。
- 肩甲骨の動き
- 肩甲骨の可動域をチェックする方法
- 肩甲骨の可動域が広がるメリット
- 肩甲骨の可動域を広げるストレッチ
私は、渋谷のパーソナルトレーニングジム「Shibuya Fitness Sharez」を2015年から運営しており、近年はパーソナルトレーナー養成スクール「Sharezスクール」の運営と講師も勤めています。
背中の上部に位置している肩甲骨は、日常生活はもちろんのこと、スポーツシーンでも大きな影響を及ぼしています。
肩甲骨の動きや、可動域のチェック方法、可動域が広がるメリットを理解して、ぜひ肩甲骨周りの筋肉をストレッチしていきましょう。
目次
肩甲骨の動き
肩甲骨は背中の周りにある骨のことで、腕と脊柱を結ぶ役割を担っています。肩甲骨と肩関節が連動することで、自由に腕を動かすことができます。
肩甲骨には、「挙上、下制、内転、外転、上方回旋、下方回旋」といった動きがあります。
- 挙上動作:肩甲骨を引き上げる動作で、肩をすくめる時に起こります。
- 下制動作:肩甲骨を下に動かす動作で、肩を下げる時に起こります。
- 内転動作:肩甲骨が内側へ動く動作(脊柱に近づく方向)で、胸を張る時に起こります。
- 外転動作:肩甲骨が外側へ動く動作(脊柱から離れる方向)で、腕を前に出す時に起こります。
- 上方回旋:肩甲骨の下側が、外側に回りながら上方に同時に動く動作で、腕を外から回してバンザイする時に起こります。
- 下方回旋:肩甲骨の下側が、内側に回りながら下方に同時に動く動作で、腕を外から回して下ろす時に起こります。
肩甲骨の動きに関わる筋肉
肩甲骨の可動域とは、上記で紹介した、「挙上、下制、内転、外転、上方回旋、下方回旋」の動きの可動範囲のことを指しています。
肩甲骨自体は骨ですので、肩甲骨を動かすのは肩甲骨に付着している筋肉です。
つまり、「肩甲骨の可動域が狭くなる、広くなる」というのは、それぞれの動きに関わる筋肉の「柔軟性が高いか、低下しているか」の違いということになります。
肩甲骨のそれぞれの動きと、関与する筋肉は以下の通りです。
- 挙上動作に関与する筋肉:僧帽筋(上部)、菱形筋、肩甲挙筋
- 下制動作に関与する筋肉:僧帽筋(下部)、小胸筋
- 内転に関与する筋肉:菱形筋、僧帽筋(中部)
- 外転に関与する筋肉:前鋸筋、小胸筋
- 上方回旋に関与する筋肉:前鋸筋、僧帽筋(上部)
- 下方回旋に関与する筋肉:菱形筋、僧帽筋(下部)、小胸筋
肩甲骨の可動域をチェックする方法
肩甲骨の「挙上、下制、内転、外転、上方回旋、下方回旋」の動きに関して、それぞれの可動域を簡易的にチェックする方法をご紹介します。
1.挙上・上方回旋の可動域チェック方法
両手のひらを頭の上で合わせ、肘を伸ばして両腕をあげていき、腕を耳につけます。
腕が耳につき、肘を完全に伸ばす事ができれば十分な可動域があると言えます。
2.上方回旋・外転の可動域チェック方法
上記1の、腕を頭の上で伸ばした姿勢のまま、手のひらを背中側に向けます。
手のひらが背中の方に向けば、十分な可動域があると言えます。
3.上方回旋・内転の可動域チェック方法
上記1の、腕を頭の上で伸ばした姿勢のまま、手のひらを前に向けます。
手のひらが正面に向けば、十分な可動域があると言えます。
1〜3の一連の動きができない場合は、僧帽筋や前鋸筋などの筋力低下や、肩甲挙筋や菱形筋の緊張が考えられます。
4.内転の可動域チェック方法
頭の後ろで両手を組み、肘を外側に開いていきます。
横から見て、身体のラインまで肘がいっていれば、十分な可動域があると言えます。
肩甲骨を内転させることが苦手な方は、胸を前に突き出すような動きをします。パートナーが確認する場合は、背中や腰の反り具合をチェックしましょう。
肩甲骨の内転ができない方は、前鋸筋や肩甲挙筋の緊張が考えられます。
5.外転の可動域チェック方法
両手のひらと両肘を胸の前で合わせる。そのまま、ひじが離れないようにゆっくりとあげます。
肘がアゴの位置まで上がれば、十分な可動域があると言えます。
この動きができない方は、菱形筋や僧帽筋の緊張が考えられます。また、巻き肩や広背筋の緊張が強い方は「両ひじをつけるところまではできるけど、上がらない」という反応が見受けられます。
6.下方回旋の可動域チェック方法
片側の手を背中に回し、その手が反対側の肩甲骨にタッチします。
肩甲骨に触れることができれば、十分な可動域があると言えます。
この動作ができる方は、両手を背中に回して合掌や、腕を上下から背中に回し、手に触れる事ができるかチャレンジしましょう。
いかり肩のように、肩甲骨が引き上げられ、肩が上がってしまっている方はこれらの動作が困難になります。
肩甲骨の可動域が広がるメリット
肩甲骨の動きに関する各筋肉が緊張し、可動域が狭くなってしまっている方が、それぞれの筋肉をほぐし、可動域が広がった場合のメリットを紹介していきます。
挙上動作の可動域が広がるメリット
肩甲骨の挙上動作の可動域が上がると、腕を持ち上げる動作がしやすくなります。
腕を持ち上げやすくなることで姿勢が改善され、結果として、首や肩こりの改善、四十肩や五十肩の予防に繋がります。
例えば、猫背姿勢の方は、「前鋸筋や僧帽筋の上部、菱形筋」の使用頻度が多いので、それぞれの筋肉が疲労してしまい、首や肩こりが起こってしまっています。
挙上動作の可動域が広がることで、姿勢を正すことができ、各筋肉の疲労の軽減に繋げることができます。
下制動作の可動域が広がるメリット
肩甲骨の下制動作の可動域が広がると、胸郭が開きやすくなり、息が上がっている時に、呼吸を補助してくれます。
肩甲骨を下に下げる動作は、手を後ろに回すときにも働いており、手を後ろに回しやすくなるメリットもあります。
内転動作の可動域が広がるメリット
肩甲骨の内転動作の可動域が広がると、肩甲骨を内側に寄るので胸郭が開きやすくなり、巻き肩や猫背といった姿勢不良の改善に繋がります。
姿勢が改善されることにより、腕を上げやすくなったり、背中の筋肉を使いやすくなるメリットもあります。
外転動作の可動域が広がるメリット
肩甲骨の外転動作の可動域が広がると、腕を前に出しやすくなるので、ボクシングや格闘技などの競技のパフォーマンスアップに繋がります。
外転動作の可動域が狭い状態ですと、腕を前に出すときに「背中を丸めたり、腰を曲げたりする動作でカバーしようとする」ので、腰や背中への負担が増えてしまいます。
外転動作の可動域が広がることで、腰や背中への負担を軽減できるメリットもあります。
上方回旋の可動域が広がるメリット
肩甲骨の上方回旋動作の可動域が広がると、腕を高く上げる動作をスムーズに行えるので、投球動作や水泳で水をかく動作をスムーズに行えます。
上方回旋動作の可動域が狭い状態ですと、腕が上がりづらくなり、肩関節に負担がかかったり、腰などで動きをカバーしようとして、肩以外の部分への負担も増えてしまいます。
上方回旋動作の可動域が広がることで、肩や腰への負担を軽減できるメリットもあります。
下方回旋の可動域が広がるメリット
肩甲骨の下方回旋動作の可動域が広がると、肩甲骨を下に下ろしやすくなり、肩こりの軽減に繋がります。
下方回旋動作の可動域が狭い状態ですと、肩甲骨を下に下げづらく、胸郭を開きづらいので猫背になってしまい、肩こりになりやすいです。
下方回旋動作の可動域が広がることで、姿勢を正すことができ、肩こりの改善に繋げることができます。
肩甲骨の可動域を広げるストレッチ
肩甲骨の可動域が狭くなってしまう理由の1つとして考えられるのが、「筋肉の緊張」です。
対象の筋肉をストレッチで緩めることで、本来の可動域を取り戻していきましょう。
以下の「肩甲骨の可動域に関与する筋肉のストレッチ方法」を順番に紹介していきます。
- 僧帽筋のストレッチ
- 菱形筋のストレッチ
- 小胸筋のストレッチ
- 前鋸筋のストレッチ
僧帽筋のストレッチ
僧帽筋は、「肩甲骨の挙上、下制、上方回旋、下方回旋、内転」の動きに関与する筋肉です。
グイグイと力任せにストレッチするのではなく、手の重みで前方へ倒すようにしましょう。
- 後ろ側に回している手の方の肩は上げない
- 背中を丸めない
- 倒し方にも注意:手のひらを反対側の側頭部に当て、そのままゆっくりと引き寄せるように倒しましょう。真横ではなく、やや斜め前に倒すことで僧帽筋がストレッチされます。
菱形筋のストレッチ
菱形筋は、「肩甲骨の挙上、内転、下方回旋」の動きに関与する筋肉です。
- 肩甲骨を引き離すことを意識する
- 腰ではなく肩甲骨を中心に背中を丸める
- 反動をつけると肩関節にストレスがかかりやすいので注意しましょう。
小胸筋のストレッチ
小胸筋は、「肩甲骨の下方回旋、下制、外転」の動きに関与する筋肉です。
- 呼吸を止めずにゆっくりと行うこと
- 小胸筋のストレッチも、反動をつけると肩関節にストレスがかかりやすいので注意しましょう。
前鋸筋のストレッチ
前鋸筋は、「肩甲骨の上方回旋、下方回旋」の動きに関与する筋肉です。
- 体をひねるときに、肩甲骨を引き寄せること
- 前鋸筋のストレッチも、反動をつけると肩関節にストレスがかかりやすいので注意しましょう。
まとめ
肩甲骨は周囲の筋肉によって支えられており、それらの筋肉が何らかの原因で機能低下を起こすと、肩甲骨の可動域にも影響を及ぼします。
肩甲骨の可動域のチェックはもちろんのこと、周囲の関節や筋肉の構造を理解することで、効果的に可動域を広げるストレッチを実施していきましょう。
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