ATに興味がある方
こんな疑問にお答えします。
今回は、「AT(アスレッチクトレーナー)」について、以下を解説していきたいと思います。
- ATとは?
- ATになるためのオススメ資格
- ATの資格はそれぞれどんな仕事に繋がるのか?
- ATの資格取得の費用
- ATの資格受験の条件と資格取得の流れ
- ATの資格学習の目安期間とオススメ学習法
私は、渋谷のパーソナルトレーニングジム「Shibuya Fitness Sharez」を2015年から運営しており、それ以前に、フィットネスジム運営企業に勤めたり、大学は体育大学だったということもあり、AT(アスレッチクトレーナー)として働いている知人も多いです。
これまでの経験や、知人から得た情報を元に、解説していきたいと思います。
目次
ATとは?
「AT」とは、「Athletic Trainer(アスレチックトレーナー)の略称です。Athleticは「運動の」という意味なので、Athletic Trainerで「運動(スポーツ)に関するトレーナー」ということです。
※「ATC」という表現もありますが、「ATC」は、「Certified Athletic Trainer(認定アスレチックトレーナー)」の略称です。
ATは、主にスポーツ現場にて、アスリートやスポーツチームをサポートする仕事です。スポーツ選手が安心して競技に集中でき、パフォーマンスを存分に発揮できる環境を整える為の役割を担っています。
具体的には、以下のサポート業務などがあります。
- 試合や練習中のケガを予防するために、テーピングやストレッチングを施す。
- 負傷してしまった場合の消毒、止血、アイシング、テーピングなどの応急処置をする。
- ケガから復帰する為のリハビリテーションのメニュー作成や指導。
- 栄養管理
ATになるためのオススメ資格
「AT」になるための資格としては、以下の3つの資格を取得するのがオススメです。
- JSPO(JASA)-AT
- NATA-BOC認定ATC
- JATAC-ATC
これらの資格は、母体組織の規模が大きく、高い信頼性があり、資格取得後に、仕事を得られる可能性が高いというメリットもあるからです。著名トレーナーの多くもこれらの資格を取得しています。
それぞれの資格は、以下の団体やチームから仕事を斡旋してもらえる可能性があります。
- JSPO:認定競技団体や、認定学校から
- NATA:スポーツチームから
- JATAC:団体のつながりから
ちなみに、日本の取得者数は、「JSPO(JASA)-AT」がトップ、「NATA-BOC認定ATC」が2番手、「JATAC-ATC」が3番手です。
それぞれの資格について、順番に解説していきます。
JSPO(JASA)-AT
「JSPO(JASA)-AT」は、日本スポーツ協会(Japan Sport Olympic Square)が発行しているアスレチックトレーナー資格です。
※JASAは、元日本体育協会(Japan Amateur Sports Association)
母体の日本スポーツ協会が、日本のスポーツ界を取り仕切る団体なので、「JSPO(JASA)-AT」は、日本のアスレチックトレーナー資格の中で、最も信頼性が高い資格と言えます。国内には、3,500名以上の資格取得者がいます。
日本スポーツ協会の前身である、日本体育協会は1911年に設立された、非常に歴史ある日本の体育&スポーツを代表する団体です。
※2018年に、「日本スポーツ協会」に名前が変わりました。
NATA-BOC認定ATC
「NATA」は、「National Athletic Trainers’ Association」の略称で、アメリカのアスレチックトレーナー資格です。
NATAは、1950年に設立されており、トレーナー資格としてはかなり歴史ある団体で、全世界で約45,000人の会員がいます。日本には、約300人ほどのNATA資格取得者がいると言われており、JSPOの取得者人数と比較しても人数が少ないのは、取得が難しいという理由からです。
1990年には「アメリカ医学会(AMA)」によって準医療従事者として認定されたことにより、アメリカの国家資格になりました。
この資格は、アメリカの大学、大学院で学ぶ必要があるので、留学のための英語力が必要であり、期間もお金もかかります。今回紹介するアスレチックトレーナー資格の中で、最も取得が大変な資格です。
JATAC-ATC
「JATAC」とは、「Japan Athletic Trainer Association for Certification」の略称です。
この資格は、柔道整復師の方々が立ち上げた団体であり、治療家向けのアスレチックトレーナー資格と言えます。
柔道整復接骨医学の研究成果を基盤にして、競技スポーツや一般スポーツにおけるスポーツ障害(ケガ)の悪化を抑え、スポーツ障害(ケガ)の予防を促進し、スポーツ活動の発展に寄与しようという目的で設立されました。
医療系、治療系出身の方向けで、スポーツ分野でも活動したい方には、オススメの資格です。
ATの資格はそれぞれどんな仕事に繋がるのか?
上記のAT資格を取得すると、それぞれどんな仕事に繋がるのでしょうか?
アスレチックトレーナーとしては、「スポーツ選手、スポーツチームの専属トレーナーとして契約する」というのが理想ですが、それは非常に狭き門であり、多くの方は、治療院やジムなどで勤務しながら、スポットや短期間の契約で、様々なスポーツ選手、スポーツチームのトレーナー活動をし、実績を作っていっています。
学生時代や資格取得前から、インターンや実習、先輩トレーナーのサポートなどで実務経験を積んでいると、スポーツチームやスポーツ選手と繋がりができ、信頼も積み重ねられるので、資格取得後、アスレチックトレーナーとして活動しやすくなります。
それでは、「それぞれの資格がどんな仕事に繋がるのか」について、紹介していきます。
JSPO(JASA)-ATと繋がる仕事
JSPO認定の体育系大学(学部)、専門学校を卒業し、資格を取得した方は、学校の繋がりや卒業生の繋がりで、アスレチックトレーナーの仕事をスタートする場合が多いです。
JSPO認定の団体の推薦を受けて、資格を取得する方もいますが、そういった方は「各スポーツ競技連盟や、各都道府県の体育協会などから仕事を依頼される」ことが多いです。
上記2つのパターンのどちらも、資格取得をしてすぐは、スポットや、短期間の仕事、ギャラの低い仕事であることが多いので、実績ができるまでは、ほとんどの方がジムや治療院で勤務しながら経験を積んでいます。
NATA-BOC認定ATCと繋がる仕事
アメリカで資格取得後、日本に帰国し、日本のプロスポーツチームのトレーナーとして活動したり、フリーランスとして、トレーニング指導、セミナー講師、資格取得サポートなど様々な活動を行なっていることが多いです。
NATA-BOC認定ATCを取得した方は、プロスポーツチームのトレーナーとして採用されないと、卒業後もアメリカに残ってトレーナー活動をするのは難しい状況です。
日本に帰国後に、プロチームのトレーナーやフリーランスで活動している人以外は、フィットネスジムで働く、治療院で働く、それらをしながらスポーツ現場で経験を積むという方が多いです。
JATAC-ATCと繋がる仕事
JATAC-ATCの資格は、医療系、治療系資格取得者向けのアスレチックトレーナー資格なので、資格取得後は治療院などに勤めながら、アスレチックトレーナーの活動をする方が多いです。
資格取得の方は、治療院経由でのスポーツ現場の仕事を優先的に請け負ったり、来院する患者さんの対応でも、スポーツ選手を優先的に対応できるようになります。
ATの資格取得の費用
ATのそれぞれの資格を取得するための費用について、紹介していきます。
JSPO(JASA)-ATの資格取得費用
JSPO(JASA)-ATの資格を取得するには、合計158,000円の費用がかかります。
内訳としては、テキスト代:15,000円、講習代:90,000円、資格試験代:30,000円、資格登録代:23,000円です。
NATA-BOC認定ATCの資格取得費用
NATA-BOC認定ATCを取得するには、アメリカに留学し、大学1年半〜3年、大学院2年は最低でも通う必要があります。
TOEFL試験費用、大学の学費、大学院の学費、NATA-BOC認定ATC試験費用など、1年間の学費が数十万から数百万はかかるので、トータル300万〜800万円程はかかります。(大学、大学院は学校によってかなり費用が異なります)
また、TOEFLを受験する英語力を身につける為に語学学校に通う方もいるので、その場合はさらに費用がかかります。
JATAC-ATCの資格取得費用
JATAC-ATCの資格取得するには、国家資格かアスレチックトレーナー資格を取得している場合と、取得していない場合で、講習の有無が変わるので、必要な費用も異なります。
<国家資格、もしくはアスレチックトレーナー資格を取得している場合>
正会員登録料:10,000円
<専門学校、大学以上を卒業しているが、国家資格、アスレチックトレーナー資格は取得していない場合>
合計で、192,500円の費用がかかります。
内訳としては、講習代:172,500円(通信教育で全必要単位を取得した場合)、会員登録代:20,000円です。
ATの資格受験の条件と資格取得の流れ
ATの資格それぞれの「受験の条件」と「資格取得までの流れ」を紹介していきます。
JSPO(JASA)-ATの資格受験の条件と資格取得の流れ
JSPO(JASA)-ATの受験条件は、以下の通りです。
- JSPO認定の体育系大学(学部)、専門学校の卒業生
- JSPO認定の団体の推薦を受けた方
「JSPOに加盟している団体からの推薦」という条件は推薦枠が決まっており、非常に狭き門ですので、資格取得者の多くは、JSPO認定の大学、専門学校(適応コース承認校)を卒業した方です。
また、「JSPO(JASA)-ATの資格取得の流れ」としては、「受験条件確認 → JSPOに応募 → JSPOで審査 → 講習受講内定者決定 → 講習受講料振込 → 講習開始(カリキュラムに沿って受講) → 講習を終えたら試験受講」という流れです。
より詳しい条件は「日本スポーツ協会公式HP」をご確認ください。
日本スポーツ協会公式HP
NATA-BOC公認ATCの受験条件
以下が、NATA-BOC公認ATCの受験条件です。
- TOEFLで必要点数以上を取得している(留学先の学校によって必要な点数は異なります)
- NATAが認定するアメリカの大学で必要単位を取得している
- NATAが認定するアメリカの大学院で必要単位を取得し、卒業している
- NATAが認定するアメリカの企業やチームでの指定時間以上のインターン実習を実施している(700〜800時間)
資格取得には、アメリカへの留学、アメリカの大学、大学院での単位取得が必須ですので、英語力も必要ですし、受験を考える際には、金銭面、期間面も考慮しなければいけません。
また、「NATA-BOC認定ATCの資格取得の流れ」としては、「留学 → 大学単位取得 → 大学院入学 → 単位取得 → インターン → 資格受験」という流れです。
まず、NATAが認定しているアメリカの大学への入学が必要です。認定校350校ほどの中から、どこの大学に留学するかを検討します。
それぞれ、特徴や学費、場所、入学条件も異なるので、詳しくは留学を専門に扱う会社さんに問い合わせてみましょう。
留学を専門に扱う会社「NSAA」の公式HP
JATAC-ATCの受験条件
JATAC-ATCは資格試験はなく、講習を受講し、必要単位を取得すれば取得できます。
ただし、講習を受ける上での受講条件が、「柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、理学療法士、作業療法士、看護師、保健師、助産師、カイロプラクター、栄養士、薬剤師、養護教諭、救急救命士、NATA-BOC認定-ATC、JSPO(JASA)-AT」のいずれかの資格を取得している方で、JATACに入会している方が対象です。
もしくは、専門学校、大学以上を卒業しており、JATACの認定する講習を受け、必要単位を取得すれば取得できます。
また、「JATAC-ATCの資格取得の流れ」としては、費用と同様に、国家資格かアスレチックトレーナーの資格を取得している場合と、取得していない場合で異なります。
<国家資格、もしくはアスレチックトレーナー資格を取得している場合>
「受験条件確認 → 会員登録 → JATAC-ATC認定申請(4月と10月の年2回交付) → 資格取得」
<専門学校、大学以上を卒業しているが、国家資格、もしくはアスレチックトレーナー資格は取得していない場合>
「受験条件確認 → 会員登録 → JATAC認定単位取得(全単位取得の場合、約1年間) → JATAC-ATC認定申請(4月と10月の年2回交付) → 資格取得」
より詳しい条件は「JATACの公式HP」をご確認ください。
JATACの公式HP
ATの資格学習の目安期間とオススメ学習法
今回は、日本で最も取得者の多い「JSPO(JASA)-AT」の「資格学習の目安期間」と、「オススメの勉強方法」、「試験当日の対策」を紹介します。
資格学習の目安期間
JSPO(JASA)-ATの場合、資格取得までに1年半ほどかかります。
受講しなければいけない集合講習が、事前にカリキュラムで組まれているので、そのスケジュールに準じた期間になります。ATの資格は他のトレーナー資格(NSCA、NESTAなど)と比べて、学習領域が遥かに広いので講習のボリュームが大きいです。
スケジュールは、このような流れです。
- 共通科目(集合講習):7〜11月のうち、4日間(課題レポート提出あり)
- 専門科目:第1回11月(東京)、第2回1〜2月(東京)、第3回5〜6月(東京)、第4回8〜9月(東京)、第5回10〜11月(愛知県)
- 理論試験:11月
- 実技試験:2〜3月
JSPO公式HPに、150時間(集合講習及び自宅学習) + 600時間(集合講習410時間 + 自宅学習190時間)とありますので、講習と自宅学習時間のトータルが750時間です。
自宅学習時間はおよそ300時間ですので、1年半の期間に継続的に学習することになります。
より詳しい情報は、JSPO公式サイトをご確認ください。
JSPO公式サイト
オススメの勉強方法
JSPO(JASA)-ATの試験合格に向けての、オススメの勉強方法は「過去問を先に解くこと」です。過去問はWed上に公開されているので、早い段階で解いてみて、出題傾向を把握しておきましょう。
JSPOでは、試験を受ける前に年間の講習のカリキュラムが組まれています。過去問を先に解いて、出題傾向を把握した上で、講習を受けると理解しやすくなります。
問題傾向がつかめたら、「生理学、解剖学、バイオメカニクスの大枠」から学び、細かい名称や暗記モノなどは後回しにしましょう。
身体の構造、仕組みから理解すると、問題を理解しやすくなります。
JSPOの協会が公開している過去問のリンクはこちらです。
JSPOの協会が公開している過去問
試験当日の対策
JSPO(JASA)-ATの資格は、他のトレーナー資格よりも問題数が多いので、スピードが命です。
理論試験は基礎科目150分で110問のマークシート、応用科目も同じく、150分100問です。回答は5択から選択します。(1つ選ぶものと、2つ選ぶものがあります)
理論試験では、まずできるものから回答し、できないものは飛ばしましょう。残りの時間を利用して、わからないものに時間をかけた方が正解率が高まります。
実技試験は、ケガの評価、テーピングなどが実施されます。時間は30分ほどです。ここでは、スピードよりも正確性を重視して練習通り行いましょう。
まとめ
アスリートやスポーツチームをサポートする「Athletic Trainer」になるための資格としては、「JSPO(JASA)-AT」、「NATA-BOC認定ATC」、「JATAC-ATC」の3つがオススメです。
最も取得しやすいのは、JSPO(JASA)-ATです。「国内でアスリートのサポートをしたい」という方は、まず、JSPO(JASA)-ATを取得して活動することをオススメします。
ただし、海外で通用する資格は、NATA-BOC認定ATCのみなので、「今後海外でも活動したい」という方は、NATA-BOC認定ATC取得が必須です。
アスレチックトレーナー以外のトレーナー資格にも興味がある方は、NSCAやNESTAの資格についての記事もご覧になってみてください。
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